加藤 盛康 様


以下、資料の本文を抜粋いたします。


自転車に乗って仕事探し

 足に障がいのある加藤さんが堀田製作所の自転車を知ったのは、今から9年前。23歳の時でした。加藤さんの足は、ペダルを回す動作ができません。しかし、堀田製作所の踏み込み式自転車を見て、「自分にも乗れるかもしれない」と堀田さんを訪ねました。そして、半年かかってでき上がった自転車に乗って、加藤さんは実感します。「これで、どこにだって行ける。自分の世界が広がったようでした。」
 自転車を手に入れたことをきっかけに、加藤さんは積極的に仕事探しを始めました。現在は週4日、病院の清掃の仕事に携わっています。通勤手段は、もちろん自転車。片道7kmもの道のりを、1時間かけて通います。「雨の日もカッパを着て行きます。自転車だと、全然苦にならないんですよね」。そう話す加藤さんのとびきりの笑顔は、喜びにあふれています。
 堀田さんによれば、加藤さんと初めて会った時には「無口な青年だな」と感じたとか。「でも、自転車に乗るようになってどんどん明るくなっていった。うれしかったですね」。加藤さん本人は、体調面でも感じることがあるといいます。「同じ障がいを持った同世代の仲間と比べると、筋肉が維持できているようです。リハビリのおかげもありますが、自転車で走っていることはやっぱり大きいと思います」

絶対に必要な存在

 「ぼくは、堀田さんの自転車に乗れて幸せだと思います。本当はもっとたくさんの人に乗ってほしいけれど、経済的に買う余裕のない人もいますから」と加藤さん。足立区、荒川区など一部の自治体では堀田製自転車の購入に助成金がありますが、全国で少しでも安く購入できるような仕組みができてくれればと願っているそうです。
 また、パンクなど一般的な故障は近くの自転車店で直せても、駆動系の修理は堀田さんにしかできません。堀田製作所がもし廃業してしまったら、メンテナンスさえできなくなる恐れもあります。加藤さんもその心配を抱えています。せっかく開いた扉が、再び閉じる…。そうならないためにも、社会がもっと障がい者や高齢者の移動手段の整備・充実を応援すべきではないでしょうか。
 加藤さんは最後に、力を込めて話しました。「ぼくだけじゃなく、体の事情で外に出られずにいる大勢の人たちにとって、堀田さんは絶対に必要な存在なんです」